活動報告 2024年11月12日
マイルストーンを感じております。河口に出たような気分でしょうか。これが言いすぎであるなら、支流が本流に合流した気分でしょうか。
最近の活動(およそ9月から現在までの期間)をいくつかご報告いたします。
コープこうべ第三地区様からチラシ掲示のご協力をいただいております。
先日、コープで貼り紙を見たという女性から電話がありました。コープの貼り紙からという方は初めてでした。でも、この支援活動の対象者はハピークレイジーの活動を知ってから半年後や一年後に連絡をくれるということが珍しくないので、こんなものかなと思います。無気力になっていたり、家庭が大変だったりで、連絡一つとることもさまざまな条件が整わないとかなわないのです。
この方には、いま神戸市の助成金で月四回のペースで市内の各地でセルフケアの会を開催しているので都合がつけやすいのではないかという事、まず初回面談が必要であること、次に気力体力のある日に初回面談をしましょうねと伝えました。電話の終わりに、「ではお互い、今日一日元気に過ごせますように」と言ったら、泣き出してしまいました。切羽詰まっているのだなあと感じます。電話は非通知でかかってきたので、心配でも連絡の取りようがありません。
神戸市の地域課題に取り組むNPO等に対する補助金採択事業で行っているセルフケアの会(2024年9月から2025年2月まで月4回のペースで神戸市内4拠点で開催)は、参加者数は少ないものの、参加している方の中にはすでに、劇的な変化を経験している方がいらっしゃいます。立ち会わせていただく私にとっても感動的な経験です。11月中に新聞の記事になるかもしれないので、今は詳しくはお伝えしません。
セルフケアの会へのオンライン参加を希望された方があったので、一回目は双方実験のつもりで行いました。すると予想以上に、伝えたいことが伝わることがわかりまして、以降、セルフケアの会はオンライン参加可といたしました。(会場によりWiFiがない場合もあります。)ほかのどこにもない進化系自助会ですので、遠方の方にも門戸を開くことができ嬉しく思います。
五十嵐が受講している男女共同参画推進員養成講座コーディネーターの冨岡様からヒントをいただき、助成金の一部で三つ折りの啓発用パンフレットを作成しました(講座主催は兵庫県立男女共同参画センターイーブン様)。当事者啓発だけでなく、チラシの配架をお願いする際の説明にも非常に役立っています。イベント開催のチラシと違い、期限があるものではないので、配架のお願いも長期間行うことができます。三つ折りとして作っているので、ペラの裏表だと見にくいと思いますが、ご参考のためアップしておきます。
神戸市が今月(11月)オレンジ・パープルリボンキャンペーンというものを開催しています。児童虐待防止(オレンジ)と女性への暴力根絶(パープル)をめざすもので、Wリボンプロジェクトとして吹田市が始めました。(イスズベーカリー様がコラボ企画でオレンジパープルリボンデーニッシュを販売していらっしゃいますので、機会がありましたら是非買ってあげてください!お友達への手土産にもぜひ!)
キャンペーンの趣旨が、あまりにもハピークレイジーと合致するので、関連各所に啓発パンフ設置を打診しているところです。
なお、低コストの、自分でできる、身体からのトラウマケア普及活動の一環として、年明け1月18日には兵庫県からの委託事業として、この対象女性への身体からのトラウマケアについて、兵庫県立尼崎総合医療センター産科婦人科部長で「性暴力被害者支援センター・ひょうご」の立ち上げメンバー田口奈緒医師をお呼びし講演会を開催します。兵庫県男女共同参画推進員神戸地域連絡会議ドマソーラ神戸と兵庫県立男女共同参画センターイーブンの共催です。企画は五十嵐で、当事者の立場から前半は私が講演させていただきます。この対象者に身体からのトラウマケアを勧め、さらにその効果について医師から語っていただくのは、おそらく日本初の取り組みだと自負しております。ご都合よろしければぜひご参加ください。オンライン参加もあります。(申し込みは11月下旬開始の見込み。)
対象女性へのリーチ方法の開拓もハピークレイジーにとっての大きな取り組みの一つです。最近、ヤングケアラー相談窓口やひきこもり相談窓口を訪ね、情報交換をさせていただく機会が何回かあったのですが、困難は独立して起こるものではなく、連鎖的にまとまって起るものなのだという思いを強くしました。
私がいままでに出会った対象女性には発達障害や不登校やひきこもりのお子さんがいる割合がびっくりするほど高いのです。しかし、自治体組織や団体の縦割り(こども、女性は別扱い)のためまとめて扱えないジレンマを感じてきました。さきほどご紹介したオレンジ・パープルリボンキャンペーンはあまり知られてはいませんが、ものすごく重要な取り組みなのじゃないかと思います。自治体や関連組織の中にも、この二つの問題は分けては考えられないものだということに賛同してくださる方が、ちらほら現れ始めています。
ヤングケアラーやひきこもり、不登校の相談窓口経由で、困難の中にある女性にリーチできる予感がしています。来年以降の課題です。
しみん基金・KOBE様による課題解決アイデア募集(阪神・淡路大震災30年)に応募し、エンパワメント部門で優秀賞を受賞しました。虐待環境にある方以外にも自分でできる身体からのアプローチによるトラウマケアを行う自助会が有効である可能性が社会的に認められた最初の例になります。12月10日に贈呈式があります。
https://www.stylebuilt.co.jp/kikin/new/2024/11/post-92.html
しみん基金・KOBE様が関連分野で活動されている方々を集めて、企画をブラッシュアップするワークショップを開催し、その後、冊子としてまとめてくださることになっています。
私の創ってきた「自分でできる・低コスト・体からのアプローチによる」トラウマケアの社会的認知度を上げるためのこの上ない機会です。(ついでながら、低コストというのは、参加費が安いというだけの意味ではなく、医療プロフェッショナルが不要、特殊な設備や環境が不要、という意味です。)
精神疾患やその他重大な疾患を発症する前に、水際で食い止める仕掛けが社会にいきわたればいいなと心の底から思います。人は誰でも、よりよく生きるポテンシャルを持って生まれてきています。それを最大限引き出したい。様々な種類の困難、さまざまなデモグラフィに合わせて形を変えながら広めたい。
五十嵐が提案している方法は、やることは理学療法や即興ダンス的なもので、理論的にはInner Family Systemに(偶然)似ているのですが、それをpartsという自分の中にある複数の人格として理解するのではなく、自分と自分の身体(という他者)との関係の中で行います。トラウマそのものを扱うのではなく(=嫌な経験について語ることは一切ありません)、自己の身体との関係をよりよいものにし、身体の声に耳を傾ける感性を高めていくだけなので、望まない副効果や副作用がないのではないかと思っています。重症度にもよるかもしれませんが、少なくとも、今までそのような報告を受けたことは一度もありません。他人が施術するのではなく、あくまでも身体の声に従って自分で行っていくことが有利に働いているのかもしれません。
これを進化系自助会という枠組みで行うことで、Inner Family Systemを使ったセラピーですとセラピストが担うであろう「ともに目撃する」役割をお互いがします。(五十嵐のフォーカスはあくまでも外からは「普通」に社会生活を送っているように見える水際以前にある方です。私は医師でも心理士でもないですし、自助会に来る方々も医師でも心理士でもないので、治療が必要な方を扱う予定はありません。)
一見普通に見えるのだけれど、ふたを開けてみるととてつもない困難の中にある人を元気にする――ものすごいポテンシャルを感じるのですがいかがでしょうか。困難の中にある人は体のあちこちに不具合が起こるので、これが普及すると、おそらく、社会が負担する医療費はぐっと減ると思います。どうやったら試算できるのでしょうか。ご存じの方ぜひご教示ください。
低コストの自分でできる身体からのトラウマケアは革新的であるために、ひろく社会に理解していただくことそのものが非常に難しいです。でも、精神的虐待という困難に対して社会が用意できる支援方法を大幅に変える可能性があるものだと信じています。今後ともお力添えいただきたく、よろしくお願いいたします。
文責 五十嵐香里