活動報告 2025年7月14日
先週、2025年度神戸市地域貢献活動補助金の採択通知をいただき、ほっとし、やっと今年度が始まったような心持がしております。もちろん活動は休みなく続くものなので、今年度はとうの昔に始まっているのですが、年度中の資金の見通しが確定することの意義はとてつもなく大きいです。
神戸市の皆様、どうもありがとうございます。
2024年11月から現在までの期間の活動をいくつかご報告いたします。
2024年度神戸市地域課題に取り組むNPO等に対する補助金採択事業として開催したセルフケアの会は参加者にとっても、ハピークレイジーの活動にとっても意義深いものとなりました。2023年度の芦屋市市民提案型事業補助金採択事業として開催した時との一番の違いは、定着率が非常に高くなったことです。
おそらく①継続することの重要性をくどいほど強調したこと、②参加される前に「初回面談」という五十嵐と一対一で30分程度話をし、セルフケアの会の目的と内容を理解していただく機会を徹底するようにしたことが功を奏したのではないかと考えています。
そのおかげか継続されている参加者全員に変化が現れました。一人は短期間でPTG(新定期外傷後成長)かと思われるほど元気になりご自身で「卒業」を選ばれました。一人は下に詳しく書きますが、支援される側から支援する側(←二項対立的には捉えたくないのですが、便宜的に)に変化を遂げられ、ご自身の困難にも非常に前向きに取り組まれています。
詳しくはメソッドのページ「参加者のことばから」をご参照ください。
https://sites.google.com/happycrazy.org/method
一方で、セルフケアの会が他の困難にも使えるのではないかという提案をちらほらいただくようになりました。そのことから、事件性のない虐待環境という困難だけに向いていた五十嵐の目が、トラウマの影響から未病の状態にある方に拡がり始めました。
それにより、前回の活動報告にも書きましたが、しみん基金・KOBE様による課題解決アイデア募集(阪神・淡路大震災30年)に応募し、エンパワメント部門で優秀賞を受賞しました。
2025年1月『わたしの身体(ヒエロファニ―)』上梓。以前書いて寝かせておいた原稿に加筆修正、本にまとめました。活動の中で頻繁に聞かれる「どうしてそんなに身体にこだわるのか」「どうやってそんなに急激に元気になったのか」という質問にお答えするつもりで書きました。
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%8F%E3%81%9F%E3%81%97%E3%81%AE%E8%BA%AB%E4%BD%93-%E4%BA%94%E5%8D%81%E5%B5%90%E9%A6%99%E9%87%8C-ebook/dp/B0DSGYG2F7/ref=tmm_kin_swatch_0?_encoding=UTF8&sr=8-1
1月Trauma Research Foundationの認定プログラム修了。このプログラムにより、五十嵐が対象者に提唱してきたことや、セルフケアの会で行っていることが、現行のトウマセラピーと理論的にも実践的にも重なる部分が多いことを知りました。とはいえTrauma Research Foundation自体が先進的な手法を取り入れる団体なので、現行というより、すくなくともこの世に存在するトラウマセラピーと言った方が正しいかもしれません。一方で、自助会という平面の関係(=専門職対クライアントという関係ではない)の中で行いながらも目標地点が高いところがハピークレイジーの特徴であることを知りました。
1月18日 兵庫県男女共同参画推進員神戸連絡会議と兵庫県立男女共同参画センターイーブン共催の講演会で、田口奈緒氏(兵庫県立尼崎層が応医療センター産婦人科部長、性暴力被害者支援センター・ひょうご立ち上げメンバー)とともに講演をさせていただきました。対面とオンラインで行ったため、オンラインでは日本全国廿浦浦から、当事者様、当事者に親しい方、支援者様のご参加があり、参加人数は100名を超えました。事件性のない虐待環境にある方への支援ニーズの高さを改めて実感しました。
また、この講演会をきっかけに特別活動法人性暴力被害者支援センター・ひょうご様との出会い、2025年度はコラボすることも決まっております。
年明けに、集団精神療法という言葉にであい、ハピークレイジーとして知らず行っていたことが、集団精神療法というものの範疇に入ることを知り、心理学の勉強の必要性を痛切に感じるようになりました。いきなり思い立ち、2月に通信の大学院(臨床心理学専攻)の受験をしましたが玉砕。
3月に団体としてのハピークレイジーとは別に、ハピークレイジーがセルフケアの会で行っていることを言語化する必要を感じ、ウェブサイトを作成しました。イメージとしては、フェルデンクライスという技法とフェルデンクライスの団体が別であるのと同じです。
ハピークレイジーに蓄積されてきた経験と、それをもとに現在行っていることを言語化することを通して、ハピークレイジーのメソッドの萌芽のようなものが見えました。
・自分でできる / 低コスト / 身体からのアプローチによる非侵襲的トラウマセラピー
・その効果による互いの変容を見届け合うコミュニティ(進化系自助会)の創出
自力と他力を折衷したこの方法を研鑽しメソッドとして確立したい。未病の状態で人知れず(おそらく一生)困難を抱えて過ごす方が多すぎる。このメソッドが、ラジオ体操ぐらいひろく知られ、多くの人の困難を数%ずつでも軽減できるとしたら、社会全体が数%生きやすい場所になるのではないでしょうか。五十嵐がターゲットにしたいのは「病気」ではなく生の質を下げてしまっている困難です。治すのではありません。質を上げたいのです。
3月に「集団精神療法とはなんぞや?」と群馬県で開催された日本集団精神療法学会第42回学術大会に参加し、そこで高橋裕子氏(大阪樟蔭女子大学大学院人間科学研究科臨床心理学専攻教授 副学長)との出会いがありました。氏は集団療法の中でもサポートグループや障害者とその家族の支援をご専門とする方で、ハピークレイジーの活動に関心を持ってくださいました。
トラウマセラピーの確立を目指したい思いは既にあったのですが、この数か月間、ハピークレイジーの活動の二つの方向性で迷っていました。一つは事件性のない虐待環境にある方に対しての様々な社会的支援を作る方向性。いわゆる社会活動的な、当事者の外側の環境を整える方向性です。もう一つは困難を抱える方本人のありようを変えるための集団トラウマセラピー手法の確立。しかし、高橋氏との出会いが、表面張力していたグラスへの最後の一滴となって、方向性が決まりました。もう、迷いません。五十嵐の適性はこちらにあると信じます。
3月31日一般社団法人ハピークレイジー解散 5月末、清算結了。すっきり。
もちろん、ハピークレイジーの活動は任意団体として継続します。何も変わりません。変わることは維持コストが抑えられるというメリットだけです。
6月西宮市市民企画講座募集。昨秋からセルフケアの会に参加していらっしゃる方がセルフケアについての講演を企画・応募をしてくださいました。1次審査を通過し、7月10日には2次審査のプレゼンをされました。プレゼンは人生初とのこと。わずか半年強で、支援される側から支援する側に変容を遂げられました。プレゼンの練習をお手伝いしたとき、内容に感動するやらありがたいやらで涙目で見ていましたら、「参観日に子供が作文を読んで、泣いているお母さんを思い出した」と。現在は結果待ち状態ですが、ここまで出来たら結果はオマケのようなものだと感じます。
6月18日ワークショップ。昨年エンパワメント部門優秀賞をいただいた「(災害対策の一つとして)被災者に対して仮設住宅でセルフケアの会を開催する」アイディアを識者と市民を交えてブラッシュアップするワークショップが開催されました(主催:しみん基金・こうべ様)。会には大阪樟蔭女子大学の高橋裕子氏にアドバイザーとしてご参加いただきました。分科会に分かれてディスカッションした折には、いままで思いつかなかったセルフケアの会の利用方法や災害時に利用するために必要な手配を参加者様よりご提案いただき、非常に刺激的な時間となりました。ますます、一般性のあるセルフケアの会の可能性を感じました。
7月にはいり大学院受験のための準備が本格化。活動のポートフォリオ作成の中で、ハピークレイジーの活動の変化に気づくことができました。思えば、走り続けてきましたが、立ち止まって歩みを整理することがありませんでした。
出発点は2022年。事件性のない虐待環境にある方が少しでも楽になることを目指し、五十嵐自身の経験や知識を情報提供していこうと思っていました。顔出しする腹がきまっていなかったので、youtubeに動画をこっそりアップしていました。
今見るとそれらの動画は、外界に対して戦う視点、当事者がご自身を守るという視点で作られていました。
活動が進む中で次第に、対象者の配偶者や子の幸せも視野に入るようになり、自分対外界(もしくは他者)という視点が失せて、枠や縁(ふち)なく安心安全である自分の穏やかさが周りに拡がっていくという視点に変化していきました。おそらく、この部分が、世の中に主流となっている当事者支援の活動と大きく異なる部分なのではないでしょうか。
ハピークレイジーのメソッドを実践する方が比較的短期間でびっくりするほど元気になるのは、この視点によるのではないかと予感しています。
穏やかに、あまり目標を立てず、嗅覚にしたがい、進めていく所存です。
今後ともお力添えいただきたく、よろしくお願いいたします。
文責 五十嵐香里